2012年映画ベストテン+「AKY48」 

『三重スパイ』(エリック・ロメール) 『テトロ 過去を殺した男』(フランシス・F・コッポラ) 『ライク・サムワン・イン・ラブ』(アッバス・キアロスタミ) 『J・エドガー』(クリント・イーストウッド) 『ル・アーヴルの靴みがき』(アキ・カウリスマ…

『江戸の悪太郎』(1939)『ハナコサン』(1943)

驚嘆すべきマキノ雅弘論『マキノ雅弘 映画という祭』(新潮選書)のなかで、山根貞男は『ハナコサン』終盤の「何とも不思議なシーン」について詳細に論じている。<戦中につくられた家庭劇やメロドラマによくあることだが、夫に召集令状がくるところで映画は…

『僕達急行 A列車で行こう』(森田芳光)

http://boku9.jp/index.html 1981年の商業的デビュー作『の・ようなもの』以来、森田芳光が追及してきたものが、まず第一に興業的なヒット、その次に作家的なこだわりだったとするならば(『森田芳光組』キネマ旬報社)、森田が長年温めてきたオリジナル企画…

2011年映画ベスト3+21

『ザ・ウォード 監禁病棟』(ジョン・カーペンター) 『魔法少女を忘れない』(堀禎一) 『トゥー・ラバーズ』(ジェームズ・グレイ、DVD) 2011年度のベストテンは、上位3作品を選出して、まずはベスト3を明記。 『ザ・ウォード』の詳細はhttp://d…

『ザ・ウォード 監禁病棟』

http://ja-jp.facebook.com/kankinmovie.jc 炸裂!懐中電灯パンチ 『ゴースト・オブ・マーズ』(2001)以来、約10年ぶりとなるジョン・カーペンターの長編新作は、精神病院の監禁病棟に収容された5人の女性患者が謎の「ゴースト」に次々に襲われる、サイコ…

『episode.0.38 あの子とパーマ』

『みーまー』上映館で販売されているスピンオフムービーのDVD『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん episode.0 回遊と誘拐』(瀬田なつき脚本、菊池健雄監督)の映像特典には、『みーまー』本編の予告編、『episode.0 』のメイキングとともに、染谷将太初監…

瀬田なつきの「ルージュ(赤)の伝言」

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(瀬田なつき、2011) https://movie-tsutaya.tsite.jp/netdvd/dvd/goodsDetail.do?titleID=1526855460&pT=null http://usodakedo.net/ http://www.musicpv.jp/music.cgi?id=10657 http://www.holic-mag.com/index.…

『喜劇 男の子守唄』(前田陽一、1972)

2010年の一番の映画イヴェントといえばポルトガル映画祭2010だったのだろうが、全作品をフォローすることはできなかったので、ここではパス。*1 シネマヴェーラ渋谷で7月におこなわれた「前田陽一の世界」は、傑作『喜劇 男の子守唄』(1972)をはじめとし…

ジャンヌ・バリバール あなたの横顔はどこに隠れたの?

『何も変えてはならない』(ペドロ・コスタ、2010) www.youtube.com 暗闇の中に「苦しいわ」という歌声が響き、天井のスポットライトが星のように光り、ステージの女性歌手のシルエットがロングショットに浮かぶコンサートの場面のあと、撮影場所はレコ…

『ヒーローショー』

ヒーローショー [DVD]後藤淳平(ジャルジャル)Amazonhttp://www.hero-show.jp/ 監督生活35年目の新作『ヒーローショー』に臨んだ井筒和幸の新たな試みは、東京のヒーローショーのアトラクションの最中に起きた乱闘騒ぎに端を発した暴力の連鎖のドラマを、勝…

『劇場版・怪談新耳袋・怪奇「ツキモノ」「ノゾミ」』

シアターN渋谷の予告編にて爆笑。 2010年9月より全国順次ロードショー。 「恐怖の最終兵器」トレーラー、スイッチ・オン! 「ヘンナモノ」でいったんカットバックして、真野恵里菜の表情を後頭部とのツーショット(!)で捉えるあたりは、さすがに芸がこま…

『座頭市 THE LAST』

http://www.the-last-1.jp/index.htmlアバンタイトルの雪の竹林の中、刀を刺されたまま抱き合う石原さとみと香取慎吾のアップには、テレビタレントとしての面影は一切感じられない。撮影・笠松則通が薄暗い画面に印象的に浮かび上がらせる、香取慎吾の首に巻…

『イングロリアス・バスターズ』

http://outsideintokyo.jp/j/review/quentintarantino/index.html「ユダヤハンター」SS大佐クリストフ・ヴァルツが、フランスの酪農家の床下に隠れていたユダヤ人一家を虐殺した際、ひとりだけ生き残った少女ショシャナが草原を走り去る後ろ姿を開いたドア…

『女囚と共に』(久松静児、1956)

http://kinema-shashinkan.jp/cinema/detail/-/1_0357?PHPSESSID=hd7mhs86ag8lf5dts7si0mdo63要約すれば「女子刑務所を舞台に、女囚の更生に情熱を傾ける保安課長と所長、そして様々な女囚たちの生態を描く豪華キャストの女性映画」ということになるのだが、…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8 どうも『接吻』の細部と細部のあいだには魑魅魍魎が潜んでいるようだ。なぜ108分あまりの劇映画のレビューにこんなに手こずっているのか自分でもよくわからない…。 本…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8 (3の続き) 差し入れの謎/謎の女 小池栄子が仲村トオルを「弁護士さん」と呼び止めて、差し入れを申し入れた時点から、『接吻』は新しい展開を見せ始める。それは小…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8蓮實重彦「許されざる者たち 万田邦敏『接吻』論」が『ユリイカ2008年4月号』に特別掲載されている。*1 東京フィルメックスの『接吻』上映前の万田監督とのトークイベ…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8 (2の続き) ノートから手紙へ テレビモニタに映し出された、警察に逮捕・連行される豊川悦司の笑顔を見た小池栄子は、ハサミ*1で事件の新聞記事を切り抜き、その切抜…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8 一般の書店では残念ながら入手困難*1な雑誌「nobody 47」が『接吻』特集を組んでいる。http://www.nobodymag.com/online_shop.html 万田邦敏インタビュー、万田珠美イ…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8 (1の続き) 文字中心主義的なコミュニケーション キャッシュカードの暗証番号のメモ書き、深夜タクシーの領収書、犯行声明メール、事件の記事と豊川の経歴を書き写し…

『接吻』(万田邦敏)

ネタバレ注意!http://seppun-movie.com/ https://www.youtube.com/watch?v=KMpDB2AdhB8 3のドラマ 劇場長編第3作、一家3人殺害犯、三者三様な男女3人の三角関係、第3の男・篠田三郎の好演、コンビニはスリーエフ…。こうしてみると『接吻』は3という数…

年末恒例2007年?新旧紅白ベスト…

ベストテンを挙げられるほど律儀に一般公開の新作を見ていないので、ここでは新作・旧作にこだわらずに年末恒例の紅白気分で(参加すること意義がある!)、2007年にスクリーンで見て印象に残った映画について書き留めておこう。 外国映画の新作(?)では、…

映画監督 川島雄三

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2007-06-07/kaisetsu.html川島雄三といえば名前ばかりが神話化されすぎていて、作品は当たりはずれが大きいのだが、まず誰もが知っているスタンダード作品『幕末太陽伝』(1957)、ソフィスティケイティドコメディの…

『「赤」の誘惑―フィクション論序説』

いわゆる文学作品に限らない「フィクション」一般を前にした時、そのテクストの表層に立ち現れる「赤」の誘惑にふと身をゆだねてみる「心の余裕」の有無、あるいは研究者として「フィクション」を理論的に記述しようとする際に最低限わきまえるべき「語彙論…