『裸女と殺人迷路』(小野田嘉幹、1959)

(以下ネタバレ全開) 『裸女と殺人迷路』は、女の殺しを命じる丹波哲郎のアップから始まる。 「ウスノロ」御木本伸介に射殺させた(半)裸女の死体を丹波哲郎が川に蹴り落とすと、音楽が流れ出し「裸女と殺人迷路」という煽情的なタイトルが浮かび上がるオ…

『喜劇 男の子守唄』(前田陽一、1972)

仮装と宙吊り、この2つが前田陽一作品に一貫して見られる主題系である。 仮装の主題は『七つの顔の女』(1969)の岩下志麻の華麗な変装をはじめとして、『喜劇 右向け左!』(1970)の自衛隊体験入隊、『喜劇 命のお値段』(1971)のニセ医者、『喜劇 昨日…

『乳房よ永遠なれ』(田中絹代、1955)

maplecat-eveさんの日記が紹介しているビクトル・エリセの白紙委任状のセレクションの中に、田中絹代監督作品『乳房よ永遠なれ』が日本映画として1本だけ選ばれている。http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20140114*1 論じられることの少ないこの傑作につ…

『エクソシスト3』(1990)

エクソシスト3 [Blu-ray]出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント発売日: 2014/10/08メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (6件) を見る黒沢清・篠崎誠が『CURE』(黒沢清、1997)の元ネタの1本として絶賛するサイコホ…

2016年映画ベストテン&勝手に映画賞 

〇日本映画ベストテン(+α) 『SHARING』(篠崎誠) 『さらば あぶない刑事』(村川透) 『クリーピー 偽りの隣人』(黒沢清) 『ジョギング渡り鳥』(鈴木卓爾) 『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(黒川幸則) 『この世界の片隅に』(片渕須直…

小津の「二階建て」と2DK

『秋日和』『晩春』 2DKの母娘と二階建ての父娘 『秋日和』の原節子と司葉子が演じる母と娘との関係―寡婦の母親ひとりを残して結婚することをためらう娘を嫁がせるために、再婚するふりまで演じる母親との親子関係は、かって『晩春』で寡夫の父・笠智衆と…

戦中マキノのローポジション

『江戸の悪太郎』(1939)『ハナコサン』(1943) https://www.youtube.com/watch?v=mwhM9cg75Zo 驚嘆すべきマキノ雅弘論『マキノ雅弘 映画という祭』(新潮選書)のなかで、山根貞男は『ハナコサン』終盤の「何とも不思議なシーン」について詳細に論じてい…

2014年映画「ベストテン」×3+α

5日遅れになったが、2014年映画「ベストテン」は以下の3通り。 〇日本映画ベストテン 『寄生獣』(山崎貴) 『銀の匙 Silver Spoon』(吉田恵輔) 『Seventh Code』(黒沢清) 『ニシノユキヒコの恋と冒険』(井口奈己) 『小さいおうち』(山田洋次)…

『寄生獣』(山崎貴)

http://kiseiju.com/ 山崎貴監督『寄生獣』は、山田洋次監督『小さいおうち』とともに、2014年の日本映画で最も喜ばしい「誤算」といえよう。2014年の日本映画は、Yというイニシャルによる嬉しい誤算で始まり、さらにもうひとりのYによる嬉しい誤…

星条旗と救世軍とスウィート・ホーム・コメディ

『善人サム』(レオ・マッケリー、1948) http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=5232 善人サム [DVD]発売日: 2014/11/25メディア: DVD度を越した博愛趣味・慈善癖・隣人愛による過剰融資のため、夫婦2人に子ども2人に居…

「三重婚」で小津追悼♥♥♥

『結婚式・結婚式』(中村登、1963) http://www.cinemavera.com/preview.php 77歳の喜寿を迎えた製鉄会社社長・伊志井寛とその「糟糠の妻」田中絹代は家族から京都旅行をプレゼントされる。 京都は初めての田中は、夫の伊志井は芸者同伴で何度も来て…

『黒の超特急』とシネマスコープの瞳

『黒の超特急』(1964) http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014-7-8/kaisetsu_29.html http://beta.veoh.com/m/watch.php?v=v6344564Whbj9eS8 「バカに細長く」狭いシネスコ画面 「バカに細長く買うんですな」 新幹線用地買収ブローカー・加東大…

『僞大学生』(1960)

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014-7-8/kaisetsu_15.html http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014calendar7-8.pdf大島渚『日本の夜と霧』とほぼ同時期に公開され、いまだソフト化されていない増村流「学生運動批判映画」。*1 4浪で大学受…

『暖流』(1957)

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014-7-8/kaisetsu_3.html http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014calendar7-8.pdf 吉村公三郎版(1939年、松竹、脚本・池田忠雄、主演・佐分利信、高峰三枝子、水戸光子)に続く、岸田國士原作の病院再建…

『女の一生』(1962)『黒の報告書』(1963)

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014-7-8/kaisetsu_22.html http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014-7-8/kaisetsu_23.html http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014calendar7-8.pdf応接間の床に倒れた撲殺死体を真俯瞰で捉えた『黒の報…

『親不孝通り』(1958)

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014-7-8/kaisetsu_7.html http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014calendar7-8.pdf 賭けボーリングだけしか能のない不良大学生・川口浩が、ファッションデザイナーの姉・桂木洋子を中絶させて棄てた冷血漢のエ…

『スパ2』の扉はルビッチとつながっている‐②

『スパイダーマン2』論‐後篇 スパイダーマンTM2 デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]発売日: 2007/07/25メディア: DVD メイおばさんの憤りと「不在の階段」 スパイダーマン廃業を決意し、変身用コスチュームをビルの谷間に脱ぎ捨てたPP…

『スパ2』の扉はルビッチとつながっている-①

『スパイダーマン2』論‐前篇スパイダーマンTM2 デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]発売日: 2007/07/25メディア: DVD 「伸ばしてつかむ」アクションの3人 『スパ2(スパイダーマン2)』のアクションの基本形、それは「伸ばしてつかむ」…

『スパ2』と『裸の拍車』のヒロインは同級生

『スパイダーマン2』論‐序説 スパイダーマンTM2 デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]発売日: 2007/07/25メディア: DVD2002年のサム・ライミ監督『スパイダーマン』シリーズ第1作(以下『スパ1』と略記)から2年後に公開された第2作『…

『乳房よ永遠なれ』(田中絹代、1955)

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2009-12/kaisetsu_47.html maplecat-eveさんの日記が紹介しているビクトル・エリセの白紙委任状のセレクションの中に、田中絹代監督作品『乳房よ永遠なれ』が日本映画として1本だけ選ばれている。http://d.hatena.n…

森崎東『ペコロスの母に会いに行く』~生きてるうちは動くのよ 死んだらまた来るよ

『ペコロスの母に会いに行く』 ペコロスの母に会いに行く 豪華版 [DVD]発売日: 2014/07/02メディア: DVDhttp://pecoross.jp/ http://hadasi.jp/ http://homepage3.nifty.com/~hispider/eihyo/morisaki.htm http://culture.loadshow.jp/special/azuma-morisak…

2013年映画ベストテン&勝手に映画賞 

『ブッダ・マウンテン〜希望と祈りの旅』(リー・ユー) 『ペコロスの母に会いに行く』(森崎東) 『デッドマン・ダウン』(ニールス・アルデン・オプレブ) 『パッション』(ブライアン・デ・パルマ) 『東北記録映画三部作』(酒井耕・濱口竜介) 『ホーリ…

『ブッダ・マウンテン〜希望と祈りの旅』(リー・ユー)

http://www.buddha-mountain.com/introduction.html http://www.tsutaya.co.jp/works/60004315.html 予告編・本編ともに素晴らしい。 2010年第23回東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞、最優秀女優賞(ファン・ビンビン)受賞作品がようやく一般公開されたが、文…

『結婚式・結婚式』(中村登、1963)

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2009-12/kaisetsu_35.html http://filmex.net/2013/sp1.html 77歳の喜寿を迎えた製鉄会社社長・伊志井寛とその「糟糠の妻」田中絹代は家族から京都旅行をプレゼントされる。 京都は初めての田中は、夫の伊志井は芸…

『SUPER8/スーパーエイト』

http://www.super8-movie.jp/ http://www.youtube.com/watch?v=HEVZyhkZc4E1979年、オハイオ州のどこかにあるらしい、リリアンという町の夏休みの夜、8ミリフィルム(コダック・スーパーエイト)でゾンビ映画を撮るローティーンの映画少年グループが、…

『任侠ヘルパー』

http://www.ninkyo-helper-movie.jp/ http://www.tsutaya.co.jp/works/60003104.html 海辺の再生のドラマ草なぎ剛が主人公・翼彦一役を演じ、西谷弘が第1話、第8話、最終話、スペシャルと演出を担当したテレビドラマ版『任侠ヘルパー』(フジテレビ)での…

『トウキョウソナタ』

『トウキョウソナタ』は、冒頭の縁側の窓から雨風が吹き込む場面を見てもわかるように、小津安二郎に劣らず成瀬巳喜男からの色濃い影響を見て取ることができる、黒沢流ホームドラマといえるだろう。*1 ここで、くたびれかけた専業主婦を演じている小泉今日子…

『秋日和』『晩春』

2DKの母娘と二階建ての父娘 『秋日和』の原節子と司葉子が演じる母と娘との関係―寡婦の母親ひとりを残して結婚することをためらう娘を嫁がせるために、再婚するふりまで演じる母親との親子関係は、かって『晩春』で寡夫の父・笠智衆とその娘・原節子が演…

”痕跡河川セーヌ”の発見ー映画史イメージの系譜学

『素晴らしき放浪者』『ドラブル』ほか 『ドラブル』(ドン・シーゲル、1975)は、マイケル・ケイン演じる英国情報部員が「ドラブル」と名乗る謎の男のグループに息子を誘拐されるスパイサスペンス・アクションだが、英国国内で事件が始まり、英国国内で…

ドゥルーズ『シネマ』の淀長節

『シネマ2』と『ストライキ』『海底王キートン』 『ストライキ』(セルゲイ・エイゼンシュテイン、1925) 『海底王キートン』(バスター・キートン、他、1924) ジル・ドゥルーズは『シネマ2*時間イメージ』第7章「思考と映画」で、ロマン・ヤコ…